親権と監護権
目次
親権・監護権とは
親権者は法的にいうと一般的に「身上監護権」「財産管理権」という二つの権限を持ちます。但し、親権と監護権を分離する場合は、「親権者が財産管理権」「監護権者が身上監護権」といった具合にそれぞれの権利義務が異なってきますので注意する必要があります。
身上監護権
身上監護権とは未成年の子の「身の回りの世話」「躾(しつけ)・教育」をする権利と義務のことをいい、民法の第820条に規定されています。この身上監護権を更に細かく分けると次のように分類することができます。
1,監護教育権
子供を監督・保護・教育する権利と義務のこと指します。
2,居所指定権
子供の生活の場(居所)を指定できる権利です。但し、子供がある程度の判断力を持つに至ったとき(12歳程度)は、子供が親権者の居所指定に従わない場合でも、同居を強制する法的手段はありません。なお、判断能力のない乳幼児などが、親権者以外の者の支配下に置かれているような場合は、子の引き渡しを請求することができます。
3,懲戒権
懲戒権とは躾(しつけ)として懲戒をする権利のことをいいます。具体的には「叱責」「軽くたたく」程度の社会常識の範囲内で認られる程度の躾を指しますので、これを超えた制裁は不法行為となる可能性があります。例えば、子供に傷害を加えたり、長時間の監禁・減食を行うなどは懲戒権の限界を超える違法なものとして不法行為になる可能性が高いといえます。
4,職業許可権
職業許可権とは、子供が職業に従事することに許可を与える権利のこといいます。逆に言えば「子供は親権者の許可なしには就職はできない」ということです。なお、親権者がはっきり子供に許可を与えていなくても、子供の仕事を手伝ったり監督していたりする場合は、許可したことになります。
財産管理権
子供名義でもっている財産に関して法律行為をする場合に、子供に代わって財産の管理をすることを言います。 しかし、未成年の子供が自分名義の財産をもっていることはまれですから、一般には親権とは身上監護権のことをいいます。
一方、監護権とは一体どのような権利なのでしょうか。前述のとおり、親権の中に「監護権」が含まれていますから、親権と監護権は普通は分けて考えることはありません。しかし、どうしても双方が「親権を譲れない」という場合は、まれに「親権者=父」と「監護権者=母」というように分けて決めることがあります。 しかし、一般には、親権者=監護権者です。
なお、監護権者は、両親以外の第三者でもなることができます、また監護権者については、離婚届に書く必要はありません。 「子供と一緒に暮らしたい!」と思う親としては親権・監護権の問題は切実な悩みだと思います。そんな方は一度冷静になって考えてみましょう。 このページでは、親権者に求められる各種の条件等を掲げますのでじっくりご覧下さい。
離婚する際、未成年の子供がいる場合は、親権者を決め、かつ離婚届に親権者を記入しなければ離婚することができません。 婚姻中の場合は、夫婦が共同して子供の親権者になりますが、離婚するとそういうわけにはいきませんので、どちらかが親権者にならなければなりません。まずは、夫婦で話し合って、どちらが親権者になるか、決めなければなりません。
ちなみに、財産管理権と身上監護権を分けた場合、離婚届に記入する親権者とは、財産管理権者になります。なので、監護権を分けたという証拠のために、そのことを離婚協議書か何かに残しておきましょう。
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親権者(監護権者)の決定
親権や監護権は、夫婦にとって譲れないのは当然のこと。しかし、親権を決める際は、単に「譲れない」と主張する前に、お子さんにとって、どちらがより幸せなのかという現実をしっかり考えましょう。
「親権は欲しい」・・・けれども現実、「仕事で帰りが遅くて子供の面倒を見られない」「子供が休みの日も仕事を休めない。休日も子供が家で一人ぼっち」「食事を作ってあげる時間がない」というのでは、子供にとってマイナスです。そんな環境になることが分かっているのに親権を取得したいというのは、親のエゴだと思いませんか?
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親権を考える際「両親がどうしたいか」ということも大事ですが、それよりも子供のことを優先に考えていきましょう。家庭裁判所が親権者・監護権者を指定する審判をする場合に考慮するのは「子供にとってどちらが精神面・情緒面で安定した生活ができるか」「どちらと一緒の環境の方が子供が安定して成長できるか」ということです。親権者を決める際は、まずは、お子さんの福祉を優先させる必要がありますので、当事者間で取り決めをする場合でも同様の観点から協議していくよう心掛けましょう。
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親権・監護権に関する調停・審判
親権者(監護権者)が夫婦の話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて調停委員の仲介の下に協議を進めていきます。この調停の中での合意に至らない場合、家庭裁判所が審判で親権者を指定することになりますが、そもそもこの親権者の指定に関する審判は「離婚の成立」」が前提となっていいるので、離婚が成立しない以上、親権者の指定がなされることはありません。
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離婚前における監護権者の指定に関する調停・審判
両親の話し合いでも家庭裁判所の調停でも親権・監護権について結論が出ない場合、子供と一緒に暮らすことを希望する側の親としては「監護権者の指定に関する調停・審判」を求めていくことになります。実は離婚の前にこの「監護権者指定の調停・審判を申立てられることを知らない人が多く、子供と一緒に暮らすことを諦めてしまう方もたくさんいます。
例えば、性格の不一致が原因で、夫が子供を連れて家を出て行ってしまった場合を想定してみましょう。この場合、夫のほとんどは「妻とは離婚したいが子供とは別れたくない」という心情になりますが、調停や裁判で親権・監護権を争ったところでほとんどの場合は母親が親権者となる実情を踏まえ「とりあえず離婚はしないでおこう(今、持っている親権を失わないようにしよう)」という方針を固めてしまうことがあります。
そうすると、子供と離れて暮らす母親としては、離婚の成立を前提とする親権者の指定も受けられず、また、裁判に持ち込んだとて「性格の不一致」を原因としては少なくとも5〜7年程度の別居期間がないと離婚が認められない、という事情から、母親は子供と一緒に暮らす選択肢を失ってしまうことが多いのです。しかし、そんなときには迷わずこの「離婚成立前における監護権者の指定に関する調停・審判」を申立てましょう。
離婚前でも申したてられるこの調停・審判は、離婚が成立しているかどうかは別としてとりあえず「子供の福祉を考慮した上でどちらが監護権者としてふさわしいか」という観点から検討することになり、調停の中で結論が出ない場合は自動的に審判に移行するため何らかの結論が出ます。
そして、審判で母親が「別居期間中の監護権者」として指定を受けた場合は、離婚する際にもかなり高い確率で親権者に指定されることになりますから、いわば事実上の「親権者決定戦」といっても過言ではありません。但し、この監護権者指定の調停・審判は子供と離れ離れになってしまったら、直ちに申立てましょう。
何ヶ月、何年もの時間が経過した後に申立てても、「なぜ今頃になって・・・」といった感じで子供に対する愛情に疑問を持たれてしまうばかりか、家庭裁判所は「一旦落ち着いた環境に問題がないのであれば無闇に環境を変えない方がよいだろう」と通常は判断しますので、監護権者の指定を争う上では圧倒的に不利な立場に置かれてしまいます。このように、監護権者の指定に関しては制度の存在を知ることはもとより、申し立てのタイミングも重要となってきますので、しっかりとした対策をしていきましょう。
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親権者決定の際に考慮する父母の事情
夫婦の関係はこじれてしまっても、「子供だけは譲れない」「絶対に親権を取りたい」と思っている方も多いはずです。実際、離婚の際、親権をめぐる争いは、とても多いのです。 「子供と一緒に暮らしたい!」と思う親としては親権・監護権問題は切実な悩みだと思います。そんな方は一度冷静になって考えてみましょう。
では、話し合いで親権者が決まらず、調停や審判になった場合、家庭裁判所は、どのような基準で親権者を決めるのでしょうか。下記に親権を決定する際の「父母の事情」「子供の事情」を挙げましたので、まずはご確認下さい。
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監護の能力・意欲(高いほど良い)
監護者に求められる基本的な能力として炊事洗濯等の家事に関する能力が挙げられます。 男性の場合、炊事・洗濯などを日常的にこなしていないことが多いのでこの点が特に不利に働くことが多いようです。但し、この点を補うため、早く帰宅することのできる職場に転職した(又は「転職が決まっている」「転職先を探している」)などの、具体的な行動を伴った「監護の意欲」が見られれば当然印象は良くなるでしょう。
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健康状態(健康なほど良い)
病気しがちでは、子供の面倒をみる上では大きなマイナスになります。親権者としての適格性を主張していく上では、「病気を隠す」とまではいかなくても「病気は持っているが日常生活には一切支障が無い」という点をキチンと説明できるようにしておいた方がいいでしょう。
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経済力(高い方が良い)
当然のことですが、子供を育てるためには一定の経済力(資産・収入)が必要です。経済的に豊かな方が子供を監護養育する上で好ましいことは言うまでもありません。しかし、経済力が高さが決定的な基準になるかどうかというとそうではなく、基本的な生活ができるかどうかというレベルの話です。
たとえば、夫の年収が1億円なのに対し、妻の年収が300万円程度だったとしても、その他の点で妻の方が親権者として適確と認められるのであれば、妻が親権者として指定されることになります。また、他方の親からの養育費等も考慮に入れた上で生活環境を考えていくことになります。前述の例であれば、年収1億円の夫が負担すべき相当額の養育費も考慮に入れた上で妻は「子供を養っていくことはできる」と主張することができます。
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居住・教育環境(快適なほど良い)
居住環境・教育環境は快適な方が良いです。たとえば、繁華街の近くの家と閑静な住宅街を比べれば、当然閑静な住宅街の方が安全の面でも教育の面でも好ましいと言えます。また、親の職業・交友関係との関連で、どのような人たちが家に出入りしているかも 子供の住環境を考える上では大きく影響してきます。
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従前の監護状況(なついている方が有利)
従前の監護状況を見ていく中で「子供はどちらになついていたか」という点も大きなポイントとなります。例えば、幼少期は母親が直接的に子供の面倒をみる機会が多いこともあり、母親の方になついているケースが多いと言えます。実際のところ、この点が母親が親権者の指定において母親が圧倒的に有利とされる理由ともいえるわけですが、逆に父親の方が日常的に子供の面倒をみており、子供も父親の方になついているような場合は、当然父親の方が有利といえるでしょう。
但し、子供が生まれて間もない「赤ちゃん」の場合は、前述の「なつく、なつかない」は検討できず、また「授乳は母親しかできない」という事実上の問題から母親の方が圧倒的に有利になります。
子に対する愛情(高いほど良い)
子供に対する愛情の強さをはかる客観的な指標はありません。ただ、実務上の観点から言えば「愛情の強さをアピールすること」より「相手方の愛情の薄さをアピール」することの方が、多いと言えます。そもそも、自分の子供に対して全く愛情を持ってな親はほとんどいませんから、愛情が強いと主張してもそれはある意味当然のことで、逆に親権者を決定する上では「当然持っているべき愛情が欠落している」という点の方が重大な問題となります。
たとえば、妻の「不倫」は親権者決定の問題とは直接的には関係しませんが、不倫をする過程で「子供をほったらかしにして不倫相手と二人で遊びに出た」などの事情がある場合は、子に対する愛情に疑問を持たれることになるでしょう。また、不倫相手と二人で遊びに行かないまでも、電話で延々と話し続ける日が続いて子供との時間を一切取らないような場合も同様に、愛情の面で疑いを持たれる可能性が高い考えられます。
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親族等の協力体制(協力者が多いほど良い)
子供を養育監護する上では、協力者は多いほど良いと言えます。特に、責任ある仕事上の立場に置かれやすい夫は、実家の両親等の協力を得なければ、子供の日常家事をサポートできない事情等もあり、これらの事情から親権者の指定を諦めてしまう夫も多いようです。
また、妻の立場から考えてみると、親族等の協力が得にくい上に経済的な不安なども重なって「自分の力ではとても子供を育てられない」と親権者になることを諦めてしまうケースも多々あるようです。
いずれにしても、親族・友人等協力者は多いに越したことはありません。これがあるのとないのとでは親権者になることに前向きになれるかどうか、大きく違ってきますので、離婚時の協力体制に不安がある場合は、予め関係者に離婚した後の協力を求めておきましょう。
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親権者決定の際に考慮する子の事情
親権者を決定する場合は子供の事情も考慮されます。家庭裁判所が親権者を決定する際に15歳に達した子供がいる場合はその意見を聞くことが義務づけられていることからもわかるとおり、子供のために親権者を決定していく手続きですから 当然といえば当然です。
また、実務上も小学校の高学年くらいの子供にはその意思を尊重した上で 親権者を決定しているようです。ここでは、家庭裁判所が子供のどのような事情を親権者決定の参考にしているかを掲げていきますのでじっくりご覧下さい。
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年齢
子供の年齢が小さいほど「母性」の重要性より、母親が有利と判断される傾向にあり、特に10歳以下では圧倒的に母親が有利と言っていいと思います。
兄弟姉妹の関係
裁判所は「兄弟姉妹は離れるべからず」の原則から、兄弟姉妹を離れ離れにするような親権者の指定は特別の事情がない限りはしないと考えてよいでしょう。なお、夫婦の話し合いで兄弟姉妹の親権者を分けることに合意したような場合はそれに従わざるをえませんが、ご両親には子供の問題を財産分与と同じように「平等に折半しましょう」では済まない問題であることをしっかり自覚していただきたいところです。
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心身の発育状況
子の心身の発育を考える上では「親が子供にどのように接しているか」はとても重要な問題と言えます。例えば、親が子供に対して躾(しつけ)をする際に「感情的に怒る」のと「教育的に叱る」のとでは子供に対する影響もかなり違ったものになります。 親の感情的な言葉・行動によって子供が正常な心身の発達が困難と考えられる場合は、親権者としては不適格と判断される可能性もありますので注意しておきましょう。
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現在の環境と環境の変化への適応性
裁判所は子供の環境については「現在の環境に問題がないのであれば現状維持が好ましい。」と判断するケースが多いと言えます。無理に環境を変えるような判断をしても子供が環境の変化に適応できないリスクを考えると、いわば「無難な結論」と言えなくはありません。
但し、一定の養育実績があるというだけで「現状維持の必要性」を根拠に親権・監護権について一方が圧倒的に有利な立場に立つとするなら「不法な形であろうと子供連れて出た方が勝ち」考えざるを得ず、しいては不法行為を助長するようなことになってしまいます。
住環境の変化は子供にとって一定のリスクは負いますが「無難な現状維持」安易な現状維持」はやめて、客観的な指標や厳密な調査に基づき本当に子供にとって良い環境はどちらかを判断する制度上の対策が求められるところではないでしょうか。
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子の意思
端的にいうと「子供がどちらの親に付きたいか」です。なお、親権を決める際、家庭裁判所では、15歳以上の子供に対しては、必ず子供本人の意思を聞かなければならないことになっています。
また、15歳未満であっても小学校の高学年ともなれば、実務上その意思を尊重した上で決定しているようですので、この意思は親権者の決定・変更の場面では特に重要な要素と言っていいでしょう。
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親権をめぐる判例
実際に監護・養育している者が優先
親権者(監護権者)は前述の「父母側の事情」と「子の側の事情」を総合的に考慮して決定されますが、「監護の継続性の基準」に関して判例は「特別な理由のない限り、現実に子供を養育監護している者を優先させるべき(東京高判昭和56.5.26)」としているものがあります。
兄弟は一緒に
未成年の子供が数人いる場合は、それぞれについての親権を決めなければいけません。兄弟がたくさんいる場合でも、判例は「兄弟姉妹はバラバラになるべきではない」としています。
離婚原因を作った者は親権者として不適当
離婚に際して、離婚原因(ex浮気等)を作り出した男性又は女性は親権者として不適当であるとする判例があります。(横浜地川崎支部昭和46.6.7)
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親権の変更・喪失
親権者は離婚後の事情が変われば変更することができます。ただし、両親の間で「親権者を変更しましょう」と合意しただけでは足りません。必ず家庭裁判所の「親権者変更の調停」または「親権者変更の審判」を経て、決定される必要があります。親権の変更をする時は、戸籍の変更も必要になりますし、何よりも、親の勝手で子供があちこちたらいまわしにされることを防ぐためです。こちらの申し立ては、父母、または祖父母等の第三者でも可能です。
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親権者の変更が認められるケース
親権変更が認められるのは、「子供の利益のために必要な場合」とされていて、次のような事情がある場合です。
●親権者が病気になり、養育できなくなった
●親権者の環境が変わり、同時に子供の環境が大幅にかわる可能性がある
●子供の対して暴力をふるったり虐待している
●親権者の再婚などで、子供の生活環境が低下した
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親権の喪失
親権者の暴力、虐待などがある場合、親権を喪失させることができます。またこのような積極的な事由でなく、子供を放置する、人任せにするなどの消極的な親権濫用も親権を喪失させることができます。
親権喪失の申し立てができるのは、子供の親族、検察官、児童相談所の所長などです。このような場合は、必要があれば、審判が確定するまでの間、親権の行使を禁止し、他の方に親権代行をしてもらうこともあります。
両親のどちらも親権をとりたくなかったのに、裁判などで無理やり親権を押し付けられた親は、このように親権を濫用する場合があります。そのような時は、親権を喪失することで、親権者がいなくなります。
この場合、この親族や児童相談所の所長などが、後見人の選任を申し立てることができます。もし、もう一方の親が子供を引き取って育てられない場合は、児童扶養施設に預ける場合もあります。
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親権がダメならせめて充実した面接交渉を
小さな子供の親権を争った場合、母性の観点からどうしても母親が親権者に決定されることが多いです。残念ながら、父親は10歳くらいまでの子供の親権取得では圧倒的に不利といわざるをえません。 であれば、無用な争いをするよりも、親権を渡すかわりに、大充実の面接交渉をゲットしちゃいましょう。
他にも、親権を譲ったという姿勢をさりげなく主張することにより、財産分与やその他の条件の話し合いを有利に進めることがえきるかもしれませんよ。 もちろん、子供の養育費はちゃんと支払った方が、面接交渉もスムーズにいきます。Ria離婚専門家は、親子をつなぐ赤い糸である 親権・監護権を面接交渉もからめ決めるお手伝いをいたします。
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